小金井に棲む2種のマルハナバチ
@ 街中でサツキツツジやネズミモチを訪れるコマルハナバチ
A 自然度の高い公園に生息するトラマルハナバチ の2種がいる。
両者は似ているが、生活場所も生態も大きく異なる
コマルハナバチの生活
コマルハナバチの成虫は4月に姿を現し、7月には繁殖を終える。
次世代の女王はその後、翌春まで休眠に入る。
人家の天井裏でも営巣できるほど適応力が高く、
都市環境に強いマルハナバチである。
トラマルハナバチ ― 武蔵野の自然が育むハチ
自然観察園での出会い
野川公園の自然観察園で、ホタルブクロの花に訪れるトラマルハナバチを観察した。
街中で見かけるコマルハナバチとは異なり、トラマルハナバチの存在は自然度の高さを示す指標
である。
ノネズミの古巣を利用する巣づくり
冬眠から覚めた女王は、ノネズミの廃巣を探して巣作りを始める。
廃巣には断熱性の高い枯れ草や落ち葉が残されており、巣材として最適である。
女王は花粉と腹部から分泌する蜜蝋で壺形の育房を作り、そこに産卵する。
孵化や幼虫の成長を促すため、育房を抱いて体温を約35℃に保つ。
この保温には多量のエネルギーが必要で、その源は花の蜜である。
育房を作る蜜蝋も、女王が摂取した蜜や花粉に由来する。
花に依存する暮らし
トラマルハナバチは、食料も巣材も花の生産物に依存している。
サクラやエゴノキのように花期が1週間ほどの植物もあるため、
生活圏には季節を通して絶え間なく花が咲くことが不可欠である。
武蔵野・野川公園で咲くマルハナバチ媒花の花暦
武蔵野公園・野川公園で咲くマルハナバチ媒花の花暦を作成したところ、早春から
春・初夏・夏・秋・晩秋まで、花期が切れ目なく続くことがわかった。
この連続性が、トラマルハナバチの生活を支えている。
花とハチの共生
トラマルハナバチは早春に冬眠から目覚め、働き蜂や次世代の雌雄を育てながら、
秋深くまで野生の花を訪れる。
花々は花粉を運んでもらうため多量の蜜を提供し、ハチと共生関係を結ぶ。
植物たちは花期をずらしながら、駅伝のタスキのようにハチを次の花へ受け渡すことで、
互いに子孫を残すため協調している。
深い自然が必要
トラマルハナバチの育房はベビーベッドのようなもので、静かで安定した空間が必要である。
コマルハナバチが人家の天井裏でも生活できるのに対し、
トラマルハナバチはノネズミの古巣のような自然度の高い環境を必要とする。
現在、小金井周辺でノネズミが暮らせる深い自然が残るのは、
ICUキャンパスと野川公園バードサンクチュアリのみとなっている。
見えない連鎖を守る
花 → ハチ → ノネズミ → 森
この連鎖が公園の自然を支えている。
大規模工事や過度な草刈りを避け、日本本来の自然環境を守ることが重要である。
(完)