ハケと野川と原っぱの自然をどう守るか?その3



第33回野川わき水まつりは、元年11月24日(日)標記のテーマで「はけ文」、「わんぱく夏まつりの会」と共催で開催した。
講演は自然環境研究センター上席研究員の斉藤秀生氏にお願いし、たいへん好評で満席の参加者は熱心に耳を傾け、
講演後に意見交換も行った。
斉藤氏は、野川ほたる村と生物技術者連絡会で共同実施した「くじら山下原っぱの生態系調査」の結果に基づき、
「原っぱの自然生態系と保全のあり方」について、パワーポイントで解りやすく写真、図表を用いて講演されました。
「くじら山下原っぱ」は、これまで武蔵野公園周辺では生態系調査が行われていない空白地帯であったため、元年になりようやく調査したものです。これまで野川ほたる村などが実施してきた調査結果と併せて周辺生態系の保全を図るための基礎情報として活用が期待されます。

この調査は、生物技術者連絡会の会員、斉藤氏が昆虫を、中西由美子氏が植物の調査を担当しました。
調査の結果、
■ 昆虫は、バッタ目(7科21種)、チョウ目(7科20種)、カメムシ目(7科15種)など、全体で8目39科83種が確認され、 バッタ科のショウリョウバッタモドキ、セセリチョウ科のギンイチモンジセセリの希少種が確認されました。
■ 植物は全体で33科83種が確認され、その中に希少種のウマノスズクサも確認されました。
昆虫及び植物の調査結果に共通していることは、多くの種が「カンタン保全地」横の野川管理道沿いの
「低位部の草地」 で発見されていることです。

ショウリョウバッタモドキ (バッタ科)
東京都RLVU(絶滅危惧U類)
ギンイチモンジセセリ (セセリチョウ科)
環境省RLNT(準絶滅危惧)
ウマノスズクサ(ウマノスズクサ科)
東京都RLVU(絶滅危惧U類)
ナンバンギセル(ハマウツボ科)

この「底位部草地」は、
 @草原広場より低位で土中の水分量が多いこと、
 A草地性の昆虫や草刈りを免れた草地草本の供給地となっている「カンタン保全地」と隣接していること、
 B昆虫などの小動物の有力な生息場所となっている野川の土手草地とも隣接していることなどから、
くじら山下原っぱの自然再生に最も適切・有効な場所であることが提言されました。
また、管理で着目するべき点として、
 @現代の都市内の希少な草地の重要性を地域で共有する必要性、
 A都市近郊草地の管理を一律に行わず多様な草地環境を計画的に創出することにより、それぞれに依存した植物や昆虫が 生育・生息が可能となること、
 B「くじら山下原っぱ」は、「低位部」、「カンタン保全地」、「草原広場」にゾーニングし、
保全の指標となる種、各ゾーンの利用の仕方等を定め、管理を継続していくことが提言されました。

さらに、今後、地域本来のより自然性の高い野草地の再生に向けての段階的な戦略として、
第一段階では、まず「低位部 」を復元地と位置付けし、カンタン保全地と同様に管理・保全の実績を積み上げながら、観察会の実施などの啓発活動も行い
第二段階では、くじら山下原っぱの低茎草地全域を対象として、復元地を選定し、保全/復元、管理の計画・実施を段階的に進めていくことが提言されました。


**** 原っぱで見られた昆虫たち(一部) ****



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